第1回
スタートアップのビジネスと特許の意外な関係

2017.8.3

スタートアップのビジネスに特許はあまり関係ない。そう考えるスタートアップ経営者の方も多いのではないでしょうか。
でも弁理士の目から見ると、スタートアップは特許と相性が良いのです。「何が特許になるか」「何を特許にするか」という2つの視点で説明します。

何が特許になるか

まず、「何が特許になるか」ですが、例えば、新しいサービスを売りとするスタートアップは、サービスの仕組み自体を権利化したいと考えるかもしれません。
しかし、サービスの仕組み自体は、特許との相性はいまひとつです。特許権の対象は「自然法則を利用した技術的思想の創作」に限られます。サービスの仕組みは、自然法則というよりは人為的な取決めに近く、特許権の対象にならないことが多いのです。
では、スタートアップのビジネスを特許で守ることはできないのかといえば、そうではありません。サービスを構成する要素の中に、特許制度の保護対象となるものがあります。
例えば、サービスを提供するためのコンピュータシステムは特許権の対象となり得ます。ガジェットなど形あるものや、様々なデバイスを動作させるためのプログラムやUIを制御するためのプログラムなども特許権の対象です。このようにスタートアップのビジネスを見回すと、特許制度の保護対象である側面は意外と多いのです。例えばIoTの分野では、ハードウェアとソフトウェアの両面が対象となりそうですね。

何を特許にするか

加えて「何を特許にするか」も大切です。特許になりそうなものの中から、ビジネスを効果的に守れるものを厳選して出願します。ビジネスに対する理解が求められますが、特許権は他人による模倣を許さない強力な権利であるため、上手く特許制度を使うことで、自社ビジネスの強みを維持し、成長に弾みをつけることができます。
特許権の対象となる「発明」は、課題と解決手段という見方で捉えることができるのですが、新しい課題に取り組むスタートアップのビジネスは、実は同時に良い発明を生み出していることも珍しくありません。

弁理士は、このように「何が特許になるか」とともに「何を特許にするか」を考えるところから、スタートアップの皆様をお手伝いします。