第12回
スタートアップ向けセミナーレポート
（IPOを目指すための知財活動）

2021.1.22

2020年12月23日、スタートアップ・ベンチャー企業の関係者向けセミナー「スタートアップ向けセミナー　～IPOを目指すための知財活動～　By IP BASE」が、特許庁と日本弁理士会関東会 中小企業・ベンチャー支援委員会 ベンチャー支援部会との共催で行われました。

【登壇者】

• 土屋 裕太氏（AI inside株式会社 管理本部人事総務部 弁護士）
• 嵐田 亮氏（株式会社ユーグレナ 管理部 法務知財課 課長 弁理士）
• 渡邊 道生穂氏（HEROZ株式会社 経営企画部 法務マネージャー 弁護士）
• 鎌田 哲生氏（特許庁 ベンチャー支援班長）
• 安高 史朗氏（IPTech特許業務法人 代表弁理士・公認会計士／日本弁理士会関東会 中小企業・ベンチャー支援委員会 ベンチャー支援部会 部会長）

【モデレーター】

木本 大介氏（弁理士／日本弁理士会関東会 中小企業・ベンチャー支援委員会 ベンチャー支援部会 委員）

実際にIPOを経験された知財担当者様をパネリストに迎え、「IPOを目指すための知財活動」をテーマに、IPO前にあった知財の苦労話、IPOまでにやっておくべき知財活動など、数々の体験談をお話しいただきました。

IPO前にあった知財の苦労話のテーマで挙がっていたのが、主に契約関連について。
契約の際には、何に注意すべきかよりも、「何をされたら困るかという視点で判断」し、「社内で確保しておきたいライン（どのあたりを守りたいか）について方針を定め、それが最低限確保されるように契約を締結すること」が肝要との話がありました。
また、共同開発契約などの交渉がまとまらない時には、交渉用のツールとして、経産省が策定した契約ガイドライン※１や、スタートアップ向けにまとめられたモデル契約書※２が、参考になるようです。

IPOまでにやっておくべき知財活動のテーマでは、「各種規程の整備」、「侵害予防調査」、「必要な特許・商標の出願」、「相談できる弁護士・弁理士との関係を作っておくこと」といった内容が挙がりました。
特に、規程の整備については必須とのこと。一方で、特許や商標については何件出願すればよいというものではなく、「件数よりも、事業の安定性を説明できることの方が大切」という意見がありました。証券会社の視点では、知財活動を、事業の継続性や安定性、将来における会社の価値を計る一つの指標という位置づけで見ていると思われるため、件数にとらわれずに、「その特許・商標が、マーケットの中で、会社にとって、どういった価値があるのか」という観点で、出願するか否かを決めていく必要がありそうです。

パネルディスカッションを通して一貫していたのが、「知財はあくまでツール」という考え方でした。知財活動そのものを目的としてしまうと、どの程度効果があったのかが分かりにくい場合もあります。
しかしながら、自社技術の裏付け、自社の強みを説明するための材料、他社を説得するための論拠、PR、といった目的で活用することで、知財活動はその真価を発揮することでしょう。

そのためにはやはり、知財の専門家である弁護士・弁理士に早い段階から相談し、協力関係を築いていくことが重要だと思われます。
弁理士を探すためには、弁理士ナビ※３というサイトもありますが、医者と同様、専門にしている領域がそれぞれ異なりますので、まずは身近な弁護士やVCなどに相談し、そこから、専門性の高い弁護士・弁理士を紹介していただくのが良いと考えられます。事業の分野ごとに別の方に依頼されるというのも手です。いずれにしても、事業に関心があり、経営者と意気投合するような専門家を選ばれると協力関係を築きやすいため、そのような観点で探されることをお勧めします。

今回のパネルディスカッションが、スタートアップ・ベンチャー企業の方々の一助となることを願っております。

※１　リアルデータの共有・利活用　経済産業省

https://www.meti.go.jp/press/2019/12/20191209001/20191209001.html

※２　「研究開発型スタートアップと事業会社のオープンイノベーション促進のためのモデル契約書ver1.0」を取りまとめました　経済産業省

https://www.meti.go.jp/press/2020/06/20200630006/20200630006.html

※３　弁理士ナビ

https://www.benrishi-navi.com/

【その他参考サイト】
スタートアップの知財コミュニティポータルサイト　IP BASE　特許庁

https://ipbase.go.jp/

写真左から木本氏、土屋氏、嵐田氏、渡邊氏、鎌田氏、安高氏、名倉氏（CIC Tokyo）

【開催概要】