第14回
知財担当者用ジョブディスクリプションのテンプレート

2023.1.30

スタートアップが知財活動を本格化する際に知財担当者の採用が必要になりますが、自社にマッチする知財担当者を見つけるのに苦労することが多く、1年以上採用に時間がかかることも少なくありません(2021/12/17の「スタートアップ向けセミナー ~スタートアップ企業に必要な知財人材と体制~ By IP BASE」 より)。
そもそも採用活動を始めるにあたりジョブディスクリプション(以下、JD)が必要になりますが、JDを作成するにあたってどのような経験やスキルを求めるべきかを知財専門家のいないスタートアップが特定することは困難です。
そこで、スタートアップ向けの知財担当者の採用に活用できるJDのテンプレートを作成しました。以下、テンプレートの概要になります。

ターゲットとするスタートアップ(以下、SU)
  • 業種:限定なし(JDは共通、採用時期などについては個別に記載する)
  • ステージ:ミドル~レイターで、IPOの1~2年前(シード・アーリーでも活用可)
  • 規模:100~200人1(研究開発型の場合は20〜50人2
  • 知財担当の有無:無し(1人目の知財担当を集めるためのJD)
候補者のペルソナ
  • JDのテンプレートに記載の「求める人物像・マインドセット」を備えていることが最低条件
  • 企業知財部経験者(できれば大企業で5〜10年勤務し、一通りの業務に対応できる人)
  • SUとカルチャーフィットしやすい人(知財人材はSUの平均年齢より結構年上の人が多いが、諦めずにフィットする人を探すこと)
  • 主体的/自律的に動き、自分で手を動かし、変化を楽しめる人

知財担当者用ジョブディスクリプションのテンプレート

ポジション
  • 各社ごとのポジションに関する説明3
職務内容
  • 業務サマリー
    特許業務を中心とした知財組織の立上げを行い、知財責任者として知財活動の推進を担っていただきます。
  • 具体的な業務4
    特許を中心に、自社の事業成長に資する知財戦略立案・実行
    自社の特許・商標の出願・権利化・管理業務
    他社知財(主に特許・商標)の侵害調査・クリアランス対応
    共同開発等における知財の取り扱いを中心とした契約書レビュー業務
    上記業務を推進する上での外部弁理士・弁護士との折衝
必須スキル・経験
  • 〇〇分野5 における知財・特許業務経験5年以上
歓迎スキル・経験
  • 弁理士資格
  • 企業知財部経験
  • 技術分野に関する適正
  • マネジメント経験
  • 知財係争経験
  • 語学力6
求める人材像・マインドセット
  • スピード感
    スタートアップの事業スピードに合わせて業務を進められる方
  • 提案力・推進力・巻き込み力
    必要な情報を自ら収集し、課題を見つけ、それに対する打ち手を提案できる方
    上記打ち手に対して、必要な関係者を見つけ、巻き込み、推進していくことができる方
ジョブディスクリプションテンプレの用語の説明(一部のみ)
  • 戦略立案/実行
    事業戦略に基づいた知財戦略の立案/実行と、そのために必要な知財活動を推進する体制の構築する業務
  • 出願・権利化
    開発部門からアイデアを吸い上げ、外部専門家(主に弁理士)とコミュニケーションを取りながら権利を出願し、権利化する業務
  • クリアランス
    他社の権利を侵害しないよう、他部門と連携して他社特許調査を実施し、調査結果に基づいたアクションを実行できる業務
  • 契約書レビュー
    共同開発契約、NDA、受託開発、業務委託等の契約内容につき、自社の知財を適切に保護できる内容となっているかを確認できる業務

上記はJDテンプレの「具体的な業務」の説明です。ここで、キャリアにより以下の特徴が見られる傾向があります。

  • 企業知財部経験者:上記業務について、1人で実行するというよりは、周り(チーム、開発部門、社外弁理士など)を巻き込んだ活動が得意です。
  • 特許事務所経験者:上記業務について、知財担当者とコミュニケーションを取りながら、具体的なドキュメントに落とし込むことが得意です。

つまり、企業知財部経験者は、「提案力、推進力、巻き込み力」に優れ、特許事務所経験者は「ヒアリング力、分析力、ドキュメント作成能力」に優れる傾向が見られます。

ダウンロード用ファイル
 1.知財担当者採用JDテンプレート

1 100-200人で最初の知財専任者を採用するSUが一定数見受けられたが、これより小規模のSUでも本JD及び補足資料は活用できると思われる

2 研究開発の方が少ない人数で採用する傾向がある

3 CTO直下の知財責任者等、入社後に知財担当者が位置するポジションを記載して下さい。

4 法務担当者がいる場合は法務担当者との分担を考慮して契約関係や商標対応等を適宜削除して下さい。

5 対象者を過度に絞らないように、電気・機械・IT・バイオ・化学等、最低限経験が必要となる粒度で記載して下さい。

6 海外での権利化が必要な場合には、リーディング、ライティングスキルは必須にした方が望ましい場合があります。また、外国籍のエンジニア等がいる場合にはスピーキングスキルも必須スキルとすべき場合があります。