取材しました!女子大生マイの特許ファイル

日本弁理士会・関東支部の中に、インターネットで
ものすごく検索されている人がいる。
その名は「稲森 謙太郎※」
彼は、最近、特許の本を書いた弁理士らしい。それも、一風変わった特許の本を書いた弁理士だというのである。どのような本なのかと興味を持ち、書店に行ってみると、法律書のコーナーに見たこともない光景が広がっていた。『女子大生マイの特許ファイル』・・・この法律書コーナーにはおよそ似つかわしくないと思われる可愛らしいマイちゃんの笑顔を見たときには多少の戸惑いもあったが、手にとって中を見てみると、内容は実にしっかりとした、れっきとした法律書であった。そこで、今回は、この『女子大生マイの特許ファイル』の著者でもあり、日本弁理士会・関東支部内での検索ランキングにもランクインしていた稲森謙太郎先生に、お話を伺った。
Q
稲森先生がこの『女子大生マイの特許ファイル』を書こうと思ったきっかけは、何だったのですか?
稲森
ここ数年は、2000年以降の「知財ブーム」が過ぎ去って、一般の知財に関する興味・関心が薄れてきているような気がしたというのと、私自身、単行本として10年くらい新作を出していなかったので、そろそろ新作を出したいと考えていました。そこへ、以前にお世話になったことのある編集者の方から、新作を出さないかとの打診を受けまして、この本を書くことに決めました。
10年前に私は「柔らかい特許本」として『知られざる特殊特許の世界』を上梓したのですが、その後、分かりやすくて親しみやすい本が全然出てこなかったので、「久々に世間を驚かせてみよう」とも考えました。
また、本格的に執筆準備を始めたのが、ちょうど弁理士試験の論文試験に合格した直後だったということもあり、せっかく得た知識を、忘れてしまう前に体系的な形でまとめたい、という欲求もありました。
※1
Q
今回このストーリーも稲森先生ご自身が考えられたとのことですが、なぜ、特許の本をストーリー仕立てにしようと思ったのですか?
稲森
以前の知財ブームが過ぎ去って、現在は知財関係の本があまり売れなくなっています。そのため、出版社と一緒に売れるための仕掛けについて色々と考えました。その中で、女の子を主人公とするストーリー仕立てにしようというアイデアが出てきたのです。
Q
また、この本には、孫正義さんやホリエモンのした特許出願など、かなりユニークな特許が数多く掲載されていますが、ユニークな特許・変わった特許というのは、日頃から探しているのですか?
稲森
探していますね。例えば、原発の事故があったら、原発関連の特許を探したりします。そして、例えば、「津波から原発を守る方法」の特許が出てきたりすると、津波で原発が機能停止に陥るような事態が震災前から想定されていたことが分かったりしますね。あとは、講演も多いので、講演に聴きに来ていた人が後でユニークな特許を教えてくれたりもしますよ。
※2
Q
いつも、取材はどのように行っているのですか?
稲森
取材には、主に電話やメールを使います。今は、メールが多いですね。しかし、電話やメールの連絡先が分からない場合は、手紙を書きます。中国までAir mailを送ったりもしました。もちろん直接会うこともあります。平野レミさんや中村修二さんには直接お会いしてお話を伺いました。ジャーナリストとして、どういう背景でその発明が生まれたのか、きちんと調べたいんです。ただ面白い特許を紹介して、「検索すれば出てくるよね」では、深みがないと思います。きちんと取材して、経緯や本質に突っ込んだものを書くことに自分でも興味があるし、皆さんも興味があると思うんです。
※3
Q
この本を書くにあたって、難しかったことや大変だったことは何かありますか?
稲森
難しかったことは、表現を簡略化することです。一般の言葉と法律用語とで意味が違う言葉があったりするので、それらをいかに間違った表現にせずに噛み砕くかといったところはかなり気を遣いました。
また、大変だったことといえば、次のようなことがありました。菅直人総理大臣の発明した「マージャン点数計算機」の実物を見に行こうと思って、わざわざ千葉県外房にある麻雀博物館まで行ったんですよ。しかし、その写真のパネルしかなくて・・・Wikipediaには実物があるって書いてあったんですけどね。Wikipediaを鵜呑みにしてはダメですね。(笑)
※4
Q
最後に、稲森先生は、この『女子大生マイの特許ファイル』をどのような人に読んでもらいたいですか?
稲森
今回は、どのような人でも読めるような本にしました。例えば、内容は親しみやすいものですが、その一方でかなり充実もさせていて、入門者~知的財産管理技能検定2級の合格も目指せるように作りました。また、普段実務を行っている弁理士でも飽きずに楽しく読める本にしています。
※5
※)「稲森謙太郎」というお名前は、ジャーナリストとして活動される際の筆名で、実名では登録弁理士です。